2016年07月27日

交通事故の損害(消極損害)

 交通事故により発生した「損害」のうち、先程の記事では「積極損害」の内訳などについてご説明しました。
 しかし、被害者が実際に負担した損害(積極損害)以外にも、治療中に仕事を休んだ期間の給料相当額(休業損害)や、後遺障害によって仕事内容が制限されたために生じる将来の減収分(逸失利益)など、金銭の支出を伴わない損害も存在します。
 このような損害は「消極損害」と呼ばれており、主に以下のようなものがあります。

@ 休業損害
 事故の影響によって会社を欠勤したり、事業を休業しなければならなかった場合、または早退するなどして十分な勤務ができずなかった場合など、事故により減収が生じたときの損害を言います。

 この「休業損害」が認められるのは、症状固定時(怪我などの状態が落ち着き、一般的な治療を続けても改善が期待できないと医師が判断した時点)までに限定されており、症状が固定した後は、以下Aの逸失利益の問題に移行します。そのため、仮に「まだ痛みが残っている」と感じる状態であっても、後遺障害として1級〜14級までの等級認定を受けられなかった場合には、症状固定後の補償を受けることができません。
 
 なお、休業損害の算定は、当該労働者の一日の「基礎収入」を割り出し、その額に休業日数を乗じて算定します。この基礎収入については、概ね以下のように考えられています。

@ 給与所得者
  事故前3ヶ月分の収入を、3ヶ月分の日数で割った金額を基礎収入として計算します。この基礎収入を証明するために、勤務先の会社から休業損害証明書を発行してもらうことが必要です。

A 事業所得者
  事業所得者であれば、事故前年の確定申告書記載の所得金額から基礎収入を計算します。

B  家事従事者
  家事従事者の場合には、女性労働者の平均賃金(賃金センサス参照)により基礎収入を計算します(「交通事故損害額算定基準」(通称:青本))。
  この点、主婦などの休業損害については、保険会社から日額5700円(自賠責保険の基準に従った支払金額)の提示を受けることがあります。しかし、賃金センサスに従った計算をした場合には、休業損害のベースとなる「基礎収入」が保険会社の提示額(日額5700円)を上回り、結果として、より手厚い補償を受けられる場合が多いといえます。
  これ以外にも、保険会社から提示された支払金額が、実務において認められる損害額よりも低く計算されているケースは少なくありませんので、金額の妥当性を確認されたい場合にはお問合せください(例:慰謝料など)。

(※1)後遺障害の等級認定は、損害保険会社を通じて損害保険料率算出機構が行うケースが多いですが、被害者ご自身(または被害者の代理人)が手続の申請をすることも可能です。当事務所では、ご要望に応じて、被害者請求による申請手続も行っております。

(※2)学生や失業者については原則として休業損害は認められないと考えられていますが、アルバイトをしている場合はアルバイト収入を基礎収入として休業損害が認められますし、また、就職先が内定していたような場合には、その就職先で得られたはずの収入について、休業損害が認められるケースがあります。

A 逸失利益
 事故によって被害者の方が亡くなった場合、その方や遺族の方は、事故がなければ得られていたであろう収入を失うことになります。また、被害者の方の症状が固定し、後遺障害が残ってしまった場合、その被害者の方は、後遺障害が残ることによって労働能力の一部ないし全部を喪失し、それによって収入が減少することになります。
 このように事故がなければ得られていたであろう利益のことを逸失利益といいます。
 
 この逸失利益の算定にあたっても、上記@の休業損害とほぼ同じような考え方のもとで「基礎収入」を計算します。そして、算定した基礎収入額をベースに、予め決められている労働能力喪失率(※3)と労働能力喪失期間(※4)を掛け合わせた金額が実際の逸失利益になります。
 逸失利益の金額は、事故当時の職業や収入状況、後遺障害の等級や症状などによって、細かく分かれます。具体的な金額については、個別にお話しを伺いながら説明させていただきますので、お気軽にお問合せください。

※3 労働能力喪失率:死亡の場合は100%、後遺障害が生じた場合にはその等級に応じて異なります(表1参照) 

※4 労働能力喪失期間:原則は症状固定時から67歳まで。ただし、後遺障害等級が低い場合は3年〜5年など、短い期間しか認められないケースもあります。

(表1)
  1級 100%
  2級 100%
  3級 100%
  4級 92%
  5級 79%
  6級 67%
  7級 56%
  8級 45%
  9級 35%
  10級 27%
  11級 20%
  12級 14%
  13級 9%
  14級 5%

※5 実際の算定にあたっては、中間利息の控除を行う必要があるため、「基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式で算定します。また、死亡逸失利益の算定の場合には、被害者の方の生活費を控除して算定します。

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交通事故の損害(積極損害)

 交通事故で怪我などをした場合には、治療費や付添看護費、通院交通費などの費用が発生します。
 このように、事故によって実際にかかった費用のことを積極損害といい、主に以下のものがあります。

@ 治療費
  基本的に、事故によって発生した怪我を治すために必要な治療費は、全額が「損害」に当たります。
  加害者が任意保険に入っていれば、治療費は、相手の保険会社から病院に直接支払われるケースが殆どです。ただし、高額診療については否定される場合があり、また、症状固定(※1)後の治療費は原則として否定されます。

(※1) 症状固定:治療を継続しても、それ以上症状が改善する見込みのない状態のことをいいます。症状固定に当たるかどうかは、医師が専門的な見地から判断します。
    
A 付添看護費
  事故の被害者が入院・通院するときに必要な付添看護費用については、以下のように考えられています。
  
  まず、職業付添人(例:専門の看護スタッフを依頼したとき)の場合は、実際にその付添人に支払った金額が「損害」になります。
  一方で、近親者付添人(例:家族が付き添ったとき)の場合には、「損害」として評価する金額が定額化されており、以下の金額が目安となります(「交通事故損害額算定基準」(通称:青本))。
  入院の場合:一日5,500円〜7,000円程度
  通院の場合:一日3,000円〜4,000円程度

B 介護費
  事故によって重い後遺障害が残ってしまった場合には、日常生活のために介護が必要になるケースがあります。このような場合にも、付添看護費と同様に、以下の金額を目安として「損害」が計算されます(青本)。
  職業的付添人の場合:実際に支払った金額
  近親者付添人の場合:一日8,000円〜9,000円

(※2) ただし、事故によって介護が必要な状態になった被害者が、事故とは別の原因で死亡した場合には、死亡後の介護費用は損害から除外されます(最高裁平成11年12月20日判決)。

C 入院雑費
  治療のために入院している間、被害者が支出した日用品購入費用、栄養補給費用、通信費、新聞代等の入院雑費については、一日1,400円〜1,600円程度が「損害」として認められます(青本)。

D 通院交通費
  通院のために発生した交通費については、公共交通機関の利用金額や、自家用車のガソリン代・駐車場代等に相当する金額が「損害」に当たります。
  ただし、タクシー代については、症状や負傷部位によって、通院のためのタクシー利用が相当なときは認められますが、怪我が軽く公共交通機関での通院が可能な場合には「損害」から除外されます。
 
E その他
  上記以外にも、事案に応じて、様々な費用が「損害」として認められる場合があります。
  被害者が亡くなられた場合の葬儀費用、車いすでの生活を余儀なくされた場合の車椅子の購入費用等はその一例です。また、弁護士を依頼して裁判を起こしたような場合には、裁判によって認められた賠償額の1割程度が認められるケースが多いです。
  その他の費用の詳細については、個別の事情に応じてご説明させていただきますので、お問合せください。

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交通事故の損害(物損・人損)

 交通事故による損害には、大きく分けて、@物的損害、A人的損害の2種類があります。

1 物的損害
 車両に生じた損害のことです。
 修理費、代車費用、レッカー代等について、相当な範囲内で認められます。
 なお、修理不可能な状態や、修理費が車両の時価額を上回る状態のことを「全損」といい、この場合には、車両の時価額のみが認められることになります。
 上記以外に、業務用の車両については休車損害が、また、修理しても評価額が減少するような場合には、その差額分(評価損)が認められる場合もあります。

2 人的損害
 事故により身体への影響があったことによる損害です。
 これは、積極損害と消極損害、そして慰謝料の3つに分類されますが、それぞれの内訳については次の記事でご紹介します。 

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