2015年04月20日

最高裁平成27年4月9日判決

既にニュース等で御存知の方も多いと思いますが、今月9日、最高裁が以下のような判決を下しました。

事案は,自動二輪車を運転して小学校の校庭横の道路を進行していた85歳の男性が,その校庭から転がり出てきたサッカーボールを避けようとして転倒して負傷し,その後死亡したことにつき,その遺族において,上記サッカーボールを蹴った当時11歳の児童の父母らに対して、親の監督責任(民法709条、714条1項)に基づく損害賠償を請求したものです。

上記事案について、一審、二審は、本件ゴールに向けてサッカーボールを
蹴ることはその後方にある本件道路に向けて蹴ることになり,蹴り方次第ではボー
ルが本件道路に飛び出す危険性があるから,父母らにはこのような場所では周囲
に危険が及ぶような行為をしないよう指導する義務,すなわちそもそも本件ゴール
に向けてサッカーボールを蹴らないよう指導する監督義務があり,父母らはこれ
を怠ったなどとして,遺族側の損害賠償請求を一部認容していました。

しかし,このような判断について、最高裁は「是認することができない」として、遺族側の請求を棄却したのです。
その具体的理由としては、
・児童が、友人らと共に,放課後,児童らのために開放されていた校庭において・・・ゴールに向けてフリーキックの練習をしていたのであり,このような行為自体は・・・本件校庭の日常的な使用方法として通常の行為である。
・責任能力のない未成年者の親権者は,その直接的な監視下にない子の行動につい
て,人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務が
あると解されるが,本件ゴールに向けたフリーキックの練習は,通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえない。
といった事実関係を挙げています。
この判断については、最高裁の裁判官全員一致の意見によるものでした。

確かに、校庭内のサッカーゴールに向けてボールを蹴るという児童の行為は、一般的に責められるべき行為とは考えられませんし、そのような場合についてまで親の監督義務違反を認めるのは、両親にとって酷な判断ではないかと思われるため、上記最高裁判決は、合理的な判断を示したものといえそうです。

ただし、上記最高裁の判断の妥当性とは別に、被害者の救済という観点からも議論が必要であると思われます。
遺族側にとっては、他者の行為によって最愛の家族を亡くしたわけであり、それについて十分な補償が得られないという結果に対して、何らかの救済手段があってしかるべきであると思いますが、上記事案に限らず、他者の行為により被害を受けたものの、相手に責任が無い、若しくは相手に資力が無いという理由で救済が得られないというケースは非常に多く存在します。保険等である程度の救済が得られる場合もありますが、一切補償が得られないというケースも決して珍しくはありません。

法的責任とは別なところで、被害者を救済する仕組み作りも、今後の検討課題といえそうです。

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2015年02月04日

最高裁平成27年2月3日決定

東京と千葉で起きた強盗殺人事件を巡り、裁判員裁判の死刑判決が妥当かどうかが
争われた2つの裁判で、最高裁判所は、2月3日、「死刑を選択するには過去の裁判例を踏まえて
判断しなければならない」とする決定を出しました。
決定は裁判員裁判においても死刑の判断に慎重さと公平性を求めたもので、いずれ
も2審の無期懲役が確定することになりました。
最高裁判所で審理されていたのは6年前に東京・港区と千葉県松戸市で起きた2つ
の強盗殺人事件の裁判で、いずれも1審の裁判員裁判は死刑、2審は無期懲役と判
断が分かれていました。
最高裁判所第2小法廷の裁判長は決定で、「死刑は被告の生命を永遠に奪
い去る究極の刑罰で、慎重さと公平性を確保をしなければならない。そのために
は、これまで積み重ねられてきた過去の裁判例で、犯行の性質や計画性などといっ
た判断要素がどのように考慮されてきたのかを踏まえた議論が不可欠である。これは裁
判官のみの裁判でも裁判員裁判でも変わるものではない」と指摘しました。
その上で、1審の死刑判決は過去の裁判例と判断が異なるのに具体的で説得力の
ある根拠が示されていないと指摘しました。
この決定により、いずれも2審の無期懲役が確定することになりました。
過去の裁判例を踏まえた判断をするように求めた今回の決定は、裁判員裁判であっても死刑
の適用には慎重さと公平性を保つ必要があることを示したもので、今後の裁判員裁判にも大
きな影響を与えるとみられます。
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2014年10月10日

東日本大震災による液状化被害に関する裁判例

東日本大震災による土地の液状化で自宅が被害を受けた千葉県浦安市の住民36人が、宅地を開発・分譲した不動産会社等に計約8億4250万円の損害賠償を求めた集団訴訟の判決が、本年10月8日、東京地裁で行われました。
東京地裁は「東日本大震災のような地震が起きて液状化が発生すると予測するのは困難だった」として、住民らの請求を退けました。
今回の裁判では、被告である不動産会社等の注意義務違反の有無が問題となっていましたが、その前提として、被告において、東日本大震災のような震災により本件液状化被害が発生し、原告らの住宅に被害が発生することを予見できたかどうか、という点が争われていました。
この点に関して、原告らは、1964年の新潟地震以降、埋め立て地の液状化は広く知られていたことなどを根拠に「液状化は予見でき、対策をする義務があったのに怠った」と主張していましたが、東京地裁では、被告は、専門家の見解を踏まえて、当時の(木造低層住宅に関する)知見としては一般的ではなかったベタ基礎を採用し、その後東日本大震災までの間は、液状化被害が生じていないこと、東日本大震災における地震は、振動時間が長時間の地震であり、そのような振動時間が液状化に大きく影響することは、本件地震後に研究が進んできたものであったことなどを指摘し、当時の被告には、本件のような地震によって液状化被害が生じると予見することは困難であったとして、被告に対する請求を棄却しました。
しかし、上記事案では、近隣地域では地盤改良を実施している事実が明らかとなっており、そうである以上、当時の知見を前提としてもベタ基礎のみで十分な対策といえるのか疑問がありますし、加えて、東日本大震災における千葉県浦安市の震度は震度5強であり、そのレベルの地震に関して予測困難と言い切ってよいのか、それを根拠付けるだけの十分な検討がなされていたのか、等を考慮しても疑義が生じると言わざるを得ません。
報道によれば本件原告の一部は控訴予定とのことであり、上訴審の審理・判断の内容も注目されます。
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2014年09月25日

固定資産税の課税処分に関する最高裁判例

 平成26年9月25日、最高裁第1小法廷は、12月に新築した自宅を固定資産税の課税日の翌1月1日時点で登記していなかった埼玉県坂戸市の女性が、その年の固定資産税を課されたのは不当だとして課税取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、「所有者が課税日時点で登記をしていなくても、課税処分が決まるまでに課税日時点の所有者として登記されていれば納税義務を負う」と指摘し、「課税は適法」との判断を示しました。

 今回の事案における上記女性は、平成21年12月に自宅を新築し、所有権を取得したものの、すぐに登記しなかったため、課税日の平成22年1月1日時点においては未登記の状態で、課税台帳にも登録されていませんでした。
 そして、その後の平成22年10月になって登記をしたところ、平成22年12月に、市が平成22年度の固定資産税を課税したため、取り消しを求めて提訴したものです。

 これに対して一審(さいたま地裁)は「現に所有している人が納税義務を負う」として請求を退けたものの、控訴審(東京高裁)は「登記がない以上、女性に納税義務はない」として課税を違法と判断していたため、最高裁判決が注目されていました。

 今回の裁判における主な争点は、地方税法343条1項が、納税義務者を固定資産の所有者とすることを基本としている一方で、ここでいう「所有者」とは,当該家屋について登記簿又は家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいうとされていることとの関係上、登記をしていない所有権者に対して課税をしてよいのか否かが争われていました。

 この点に関して、上記最高裁判決は、「(地方税)法が、固定資産税の納税義務の帰属につき,固定資産の所有という概念を基礎とした上で(343条1項),これを確定するための課税技術上の規律として,登記簿又は補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者が固定資産税の納税義務を負うものと定める(同条2項前段)一方で,その登記又は登録がされるべき時期につき特に定めを置いていないことからすれば,その登記又は登録は,賦課期日の時点において具備されていることを要するものではないと解される」として、登記されていなくても所有者であれば課税処分をしてよいとの判断を示したものです。

 最高裁判決では、上記のとおり、地方税法に関する法律解釈により結論を導いていますが、これまでの固定資産税の課税実務上も、上記最高裁判決同様の扱いがなされてきていたため、今回の最高裁判決は、そのような実務上の取扱いを正面から認めたという点でも、重要な意義を有する判断であったといえます。

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2014年08月08日

インターネット検索サイトに関する裁判例

平成26年8月7日、京都地裁において、インターネットの検索サイトに関して以下のような判決が下されました。

事案は、2012年12月に京都府迷惑行為防止条例違反(盗撮)の疑いで逮捕され、13年4月に執行猶予付有罪判決が確定した京都市の40代男性が、インターネットの検索サイトで自分の名前を検索すると、過去の逮捕記事が明らかになり、名誉を傷つけられたとして、男性がサイトを運営するヤフー(東京)に、検索結果の表示差し止めや慰謝料など約1100万円の損害賠償を求めたというものです。

この事案において、京都地裁は、「ヤフーは検索結果の表示によって、男性の名前が載っているサイトの存在や所在、記載内容の一部を自動的に示しているだけだ。自ら逮捕事実を示していない」と指摘した上、「小型カメラで盗撮したという特殊な犯罪で、社会的関心は高い。逮捕から1年半程度しか経過しておらず、公共の利害に関する事実だ」として、男性の人格権が違法に侵害されたとは認められないと判示して男性の請求を棄却しました。

被害を受けた方への通知制度とは無関係に、インターネット上でその男性の犯罪歴を晒し続けることを認めることとなる上記判決は、インターネットにおける情報拡散のスピード、一度掲載されれば削除が困難であるという事実等を十分に考慮しているのか、疑問なしとしません。上記事案では男性は事実を認めていますが、冤罪のケース等においては特に問題になると思われます。

上記裁判例は事例判断とはいえ、今後、同種の裁判が続く可能性もあり、インターネットを通じた人権侵害の危険性等について、今一度、慎重な判断が求められます。

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