2014年03月25日

最高裁平成26年3月24日判決

最高裁は、平成26年3月24日判決において、労働者に過重な業務をさせたことにより、労働者に鬱病が発症し増悪した場合において,以下の(1)〜(3)の事情がある場合には、使用者の安全配慮義務違反等に基づく損害賠償の額を定めるに当たり,当該労働者が自らの精神的健康に関する一定の情報を使用者に申告しなかったことをもって過失相殺をすることができないとの判断を下しました。

過失相殺とは、損害賠償請求訴訟等において、賠償請求している側にも一定の過失や原因がある場合に、「損害の公平な分担」という理念のもと、その過失や原因の割合に応じて、請求している側にも損害を負担してもらう、つまり請求できる金額を減らしましょうというような考え方です。

今回の事案では、労働者側が使用者側に対して鬱病の発症や症状悪化により損害を受けたとして損害賠償請求をしたことに対し、使用者側は、労働者が神経科への通院や診断された病名及び処方薬等の情報を使用者側に申告しなかったことにより、使用者が労働者の症状悪化を防ぐための処置をする機会を失った、として、労働者側にも過失があるため過失相殺をすべきだと主張していました。

しかし、最高裁判決は、労働者側が自分の精神的健康被害に関する情報を使用者側に申告しなかったとしても、以下(1)〜(3)のような事情があれば、そのような申告をしなかったことが直ちに請求額を減らすだけの過失や原因にはならない、と判断したものです。

(1) 当該労働者は,鬱病発症以前の数か月に休日や深夜を含む相応の時間外労働を行い,その間,最先端の製品の製造に係るプロジェクトの工程で初めて技術担当者のリーダーになってその職責を担う中で,業務の期限や日程を短縮されて督促等を受け,上記工程の技術担当者を理由の説明なく減員された上,過去に経験のない異種の製品の開発等の業務も新たに命ぜられるなど,その業務の負担は相当過重であった。
(2) 上記情報は,神経科の医院への通院,その診断に係る病名,神経症に適応のある薬剤の処方等を内容とし,労働者のプライバシーに属する情報であり,人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であった。
(3) 上記(1)の過重な業務が続く中で,当該労働者は,同僚から見ても体調が悪い様子で仕事を円滑に行えるようには見えず,頭痛等の体調不良が原因であると上司に伝えた上で欠勤を繰り返して重要な会議を欠席し,それまでしたことのない業務の軽減の申出を行い,産業医にも上記欠勤の事実等を伝え,使用者の実施する健康診断でも頭痛,不眠,いつもより気が重くて憂鬱になる等の症状を申告するなどしていた。


上記の判例は、個別事例に関する判断であり、簡単に一般化できる問題ではありませんが、ブラック企業が問題化する昨今、企業のあり方について一石を投じる判決といえるのではないでしょうか。

posted by 仙台あさひ法律事務所 at 07:04| Comment(0) | 判例紹介