2016年08月16日

欠陥住宅について(権利行使の期間)

 前回までのとおり、欠陥住宅について売主や施工者などの法的責任が認められる場合でも、これらの責任追及は一定の期限内に行う必要があります。
 もしこの期限を過ぎてしまった場合には、一旦発生した請求権が消滅するなど、権利の行使が制限される可能性が高くなりますので、十分にご注意ください。

 この請求権が消滅する法律上の仕組みは、主に時効と除斥期間の2種類に分かれます。
 いずれも一定期間を経過することにより権利が消滅する点で同じですが、時効期間の進行は、裁判上の請求(訴訟の提起)や差押え、債務の承認等によって中断するものの、除斥期間の進行は中断しないという違いもあります。

 以下では、欠陥住宅問題における時効や除斥期間について、@瑕疵担保責任、A債務不履行責任、B不法行為責任の3つに分けて、簡単に説明していきます。

1 瑕疵担保責任
 瑕疵担保責任の時効期間や除斥期間は、建物を取得した原因が「請負」(注文住宅など)か、「売買」(建売住宅など)かによって異なります。

 @ 請負契約の場合
 請負契約における瑕疵担保責任の存続期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これに類する構造の工作物については引き渡しから10年、その他の建物(木造等)については引き渡しから5年とされています(民法638条)

 この場合の存続期間は除斥期間と考えられており、この期間内に請求をしなければなりませんが、これは、裁判以外の方法による請求でも構わないとされています(最高裁平成4年10月20日判決)。

 また、建物が瑕疵によって滅失又は毀損した場合には、滅失又は毀損したときから1年以内に瑕疵担保責任に基づく請求権の行使をしなければなりません(民法638条2項)

 以上は民法上の原則ですが、平成12年4月の品確法の制定により、平成12年4月1日以降に契約された新築住宅の請負人は、「構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分」の瑕疵について、引き渡しから10年間、瑕疵担保責任を負う(品確法94条1項)ことになりました。

 ただしこの場合でも、上記民法638条2項の適用があるので、建物が瑕疵によって滅失又は毀損した場合には、滅失又は毀損したときから1年以内に瑕疵担保責任に基づく請求権の行使をしなければならないことに注意が必要です。

 A 売買契約の場合
 売買契約における瑕疵担保責任の存続期間は、事実を知ったときから1年(民法570条、566条3項)です。
 
 この場合の存続期間も除斥期間であり、裁判以外の方法による請求でも構わないとされています(最高裁平成4年10月20日判決)。
 
 また、瑕疵担保責任による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引き渡しを受けたときから進行するとされているため(最高裁平成13年11月27日判決)、引渡しから10年間で時効消滅することにも注意が必要です。
 
 なお、請負契約同様、売買契約に関しても、品確法の適用があり、平成12年4月1日以降に契約された新築住宅の売主は、「構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分」の瑕疵について、引き渡しから10年間、瑕疵担保責任を負う(品確法95条1項)ことになりました。
 
 ただしこの場合でも、上記民法566条3項の適用があるので、買主は事実を知ったときから1年以内に瑕疵担保責任に基づく請求権の行使をしなければなりません。

2 不法行為責任
 不法行為に基づく損害賠償責任の存続期間は、損害及び加害者を知ったときから3年、不法行為のときから20年とされています(民法724条)
 
 前者は時効期間、後者は除斥期間とされていて、前者の「損害及び加害者を知ったとき」とは、被害者が、建築士の鑑定等によって瑕疵の存在を具体的に知った時点と考えられています。

3 債務不履行責任
 債務不履行責任に基づく損害賠償請求権は、請求できるときから10年の消滅時効にかかります(民法166条1項、167条1項)。

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欠陥住宅について(損害の種類)

 これまでのページでは、欠陥の内容や責任追及の方法についてご説明しましたので、今回は「損害」の種類について触れたいと思います。

 欠陥住宅問題において、売主や施工者などに損害賠償請求ができるのは、主に以下の項目に限られます。

@ 補修のための費用
A 自宅の修理期間中に別の建物に居住した場合の家賃や引越費用
B 賃貸物件に瑕疵があった場合に本来得られたはずの家賃相当額
C 欠陥の調査・損害賠償請求のためにかかった建築士費用や弁護士費用
D 慰謝料(限定的)

1 補修のための費用(瑕疵補修費用)
 建物に欠陥があった場合に、その瑕疵を補修するための費用が「損害」に含まれることは言うまでもありません。
 
 なお、取壊しや建替費用については、以前はこれらの費用の損害賠償賠償請求は認められないと判示した裁判例もありましたが、最高裁平成14年9月24日判決において、取壊し・建替え費用の請求が認められました。

2 自宅の修理期間中に別の建物に居住した場合の家賃や引越費用
 補修期間中に自宅に住めないような場合には、仮住まいの賃料や、その仮住まいへの引越し費用、補修後の建物への引越し費用等の請求が可能です。 

3 休業損害・逸失利益
  賃貸物件に欠陥があるような場合には、本来ならその建物を賃貸して得られたはずの賃料など、休業損害や逸失利益の請求が可能となります。

4 建築士費用・弁護士費用
  欠陥住宅調査のために建築士による調査鑑定費用が生じた場合や、弁護士を依頼する必要があった場合には、調査鑑定費用についてはほぼ全額、弁護士費用については総額の1割程度が認められるケースが多いといえます。

5 慰謝料
  住宅の取得は、一生に一度の買い物ともいえ、これに欠陥が存在したような場合に、重大な精神的苦痛を被ることは容易に想像がつきます。
 しかし、これまでは、補修費用の支払等によって財産的損害が回復されれば精神的損害も回復されるなどという考え方も存在し、なかなか慰謝料請求は認められてきませんでした。
 最近は、このような考え方から脱却し、欠陥住宅の場合に慰謝料請求を認める裁判例も増えてきていますが、それでも100万円以上の慰謝料が認められる例はあまり多くはありません。

 どのような損害について請求できるかは、具体的な事案によって判断基準が異なることも多く、ケースバイケースです。
 個別のご相談時には、過去の裁判例などに基づいてより詳しいご案内が可能ですので、詳細はお気軽にお問合せください。

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2016年08月15日

欠陥住宅について(責任追及の方法A)

 前回では、売買契約について触れましたので、この記事では、請負契約により住宅を取得した場合についてご説明します。

1 請負契約について
 請負契約により住宅を取得した場合には、施工者や設計者、工事監理者に対し、その責任を追及することになります。

(1) 施工者に対する責任追及
 施工者が負う責任の種類は、「瑕疵担保責任」「債務不履行責任」「不法行為責任」に分かれます。

 @ 瑕疵担保責任と債務不履行責任の関係
 施工者(請負人)の契約責任については、建物完成前は債務不履行責任(民法415条等)、建物完成後は瑕疵担保責任(民法634条)を負うとされています。

 建物完成の時期については、「請負工事が当初予定されていた最終の工程まで一応終了し、建築された建物が社会通念上建物として完成しているかどうか、主要構造部分が約定どおり施工されているかどうか」等を基準として判断されます(東京地裁平成3年6月14日判決)。

 ただし、最終工程まで終了していても、重大な構造欠陥があるような場合には、建物が完成していないと評価することになります。

 A 瑕疵担保責任
 建物に瑕疵があれば、施工者に対し、瑕疵担保責任(民法634条)に基づく瑕疵修補請求(修理)や損害賠償請求ができます。

 なお、民法635条は、請負契約においても契約の目的が達成できないときには解除ができると規定されているものの、同条但し書きにおいて「建物その他の土地の工作物については、この限りでない」とされていることから、建物完成後の解除は認められないというのがこれまでの考え方でした。

 しかし、最近の裁判例においては、建物完成後でも重大な瑕疵により契約の目的が達成できない場合には、契約の解除が認められるようになってきています。

 B 債務不履行責任
  建物完成前において、施工者の責に帰すべき事由により損害を被った場合には債務不履行責任に基づく損害賠償請求や契約解除が可能です(民法412条、415条、541条、543条)。

 C 不法行為責任
 前回の記事で触れた最高裁平成19年7月6日判決は、「建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないよう配慮すべき注意義務を負う」と判示していることから、契約関係にある者との間でも当然に不法行為責任(民法709条)を負う場合があると考えられます。
 
 この不法行為責任と瑕疵担保責任は、請求権競合の関係にあるとされています(福岡地裁平成11年10月20日判決)。

(2) 設計者、工事監理者に対する責任追及
 設計者、工事監理者が負う責任の種類は、「債務不履行責任」「不法行為責任」に分かれます。
 
 建築士法においては、「建築士は、設計を行う場合においては、設計に係る建築物が法令又は条例の定める建築物に関する基準に適合するようにしなければならない」とされています(建築士法18条1項)。

 また、工事監理とは、上記のとおり、「工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」(建築士法2条7項)ですが、建築士がこの工事監理を行うに際しては、「工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に対して、その旨を指摘し、当該工事を設計図書のとおりに実施するよう求め、当該工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告する義務を負」います(建築士法18条3項)。
 
 したがって、注文主としては、設計者や工事監理者が上記の義務に違反して損害を受けたときには、設計者や工事監理者に対して債務不履行責任(民法415条等)もしくは不法行為責任(民法709条)を追及することができます。

 なお、部材供給者に対する製造物責任法に基づく賠償請求や、建築確認処分に違法があった場合の国家賠償請求が認められる場合があることも、前記の売買契約の場合と同様です。

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